離婚に必要な事由
目次
裁判での解決に必要な5つの事由
裁判で離婚する場合に必要な要件として、法律で以下の5つの離婚原因が規定されています。
不貞行為
不貞行為とは
不貞行為とは、「その意思にもとづいて配偶者以外の者と肉体関係をもつ場合」をいいます。夫婦は各々が同居・協力・扶助義務を負っています。
この同居・協力・扶助義務には貞操を守る義務もあります。貞操を守る義務を破ったことが不貞行為となります。
性風俗と不貞行為
夫が性風俗に通うことが不貞行為となるかについては、肯定否定両説あるところです。
裁判例では、不貞行為と認定したもの、性行為があったとはいえないとして不貞行為ではないとしたものがあります。性風俗に通う頻度や理由等から不貞行為と認定される可能性はあるでしょう。
また、不貞行為とされないとしても⑤の「婚姻の継続が困難な重大な事由がある場合」に該当する可能性があります。
一回でも不貞行為となるか
一回限りでも不貞行為であることは明らかですが、離婚原因である不貞行為として認められるかは難しいところです。
離婚原因である不貞行為は、ある程度継続的な肉体関係を前提としていると考えられているからです。
しかし、その不貞行為により、夫婦関係が破綻に至っているような場合には、⑤の「婚姻の継続が困難な重大な事由がある場合」に該当することになると考えられます。
夫婦生活が破綻した後の不貞行為
法的にみて既に夫婦生活が破綻した後の不貞行為は、離婚原因と無関係であり、不貞行為には該当しないとされています。
ただ、この破綻していたか否かは、たとえば単に別居していただけで破綻していると認定されるわけではありません。
別居していても完全に破綻していていない状況で配偶者以外の相手と性的関係を結ぶ行為は、不貞行為に該当する可能性があります。
婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為であるといえるかが問題となります
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは?
悪意の遺棄とは、正当な理由のない同居・協力・扶助義務の放棄をいいます。配偶者が家族を放置して、家を出て生活費の負担もしないような場合がこれに当たります。
別居は悪意の遺棄にあたるか。
裁判で、別居を悪意の遺棄だという主張は多くあります。しかし、別居が一方の配偶者にのみ原因があることは少なく、正当な理由がないとまではいえないとかされるケースが多いでしょう。
ただし、一定期間別居していれば、それが⑤の婚姻を継続しがたい重大な自由に当たるとされて、離婚が認められる場合があります。
3年以上の生死不明
生死不明とは?
生死不明という客観的状況が3年間継続していることを意味します。生死不明の原因は問いません。単なる行方不明や音信不通では足りません。死亡している可能性があることが必要です。
失踪宣告
7年以上生死不明のときは、民法の定める失踪宣告によって死亡したものとみなされます。これにより、婚姻関係は終了することになります。ただし、後に生存が判明した場合は、婚姻関係が復活することになります。失踪宣告は、行方不明者を死亡したものと扱る制度であり、婚姻関係を終了させることを目的とした離婚とは趣旨・目的が異なります。
回復の見込みがない強度の精神病
強度の精神病とは?
強度の精神病とは、単に精神病になっているだけではなく、それが回復困難な程度に強度なものであることが必要です。その判断は、医師の専門的判断が必要となります。
強度の精神病であっても離婚が認められない場合
判例は、「強度の精神病に該当する場合であっても、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的な方途を講じ…その方途に見込みがついていなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当」であるとしています。裁判においては、この具体的方途を立証する必要があります。
その他の婚姻を継続しがたい重大な事由
重大な事由とは?
婚姻共同生活が破綻し、その修復が著しく困難な事由をいいます。
婚姻を継続する意思がなく、婚姻共同生活を修復することが著しく困難であることを意味します。有責性とは関係がないことに注意が必要です。
具体例
暴力を振るう場合などは典型的な場合です。そのほかには、浪費や多額の借金なども該当します。
性格の不一致は離婚理由としてもっとも多いと言ってもいいですが、夫婦は互いに性格の不一致があったとしても、それを克服するために努力する義務があり、当然に離婚原因とはなりません。としても、ほかの要素と相まって離婚原因となることはあります。
※上記に当てはまる場合にも離婚が認められないケースもあるため専門家への相談が必要です。
有責配偶者からの離婚請求
①有責配偶者とは?
婚姻関係を継続することが出来ない状況、婚姻を破綻させた原因を作った側の配偶者のことを言います。不貞行為をした配偶者から離婚請求をされたときに、離婚をしたくない他方の配偶者が離婚を否定する主張となります。
②有責配偶者からの離婚請求は認められる?
この点について、判例は、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められないとしました。そして、例外的に離婚請求が認められる場合として、以下の要件を挙げています。
- ⅰ夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間と比較して、かなり長期間に及んでいること。
- ⅱ 当事者の間に未成熟の子供が存在しないこと。
ⅲ 相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に非常に苛酷な状況におかれること - になるなど、離婚請求を認めることによって相手方が大きなダメージを受けるような事情がないこと
③実際の裁判では?
有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかの判断基準として、上記の3つ判断要素を基準に検討する必要があります。個々の事案によって事情が異なり、全ての事案で同一に考えることはできません。あくまで当該事案における様々な事情を基に判断することになり、単純に別居の年数が何年であるかなどの数字で決まることではないことに留意する必要があります。
まとめ
離婚が認められるかどうかは、どうしても価値的、評価的要素が入り込んできます。
破綻とは、あくまで法律的な概念であり、法律上の離婚原因となるかの判断です。しかし、上記のように価値的・評価的であるが故に、実際の判断は非常にナイーブなもので、判断が難しいことが多くあります。裁判での主張の仕方も難しく、証拠の有無も問題になります。まずは弁護士に相談し、立証の点なども検討し、方策を立てる必要があります。