有責配偶者からの離婚請求
目次
1 有責配偶者からの離婚請求とは?
婚姻関係を継続することが出来ない状況、婚姻を破綻させた原因を作った側の配偶者のことを言います。
典型的なのは、不貞行為をした配偶者から離婚請求をされたときに、
他方の配偶者が離婚したくないときに、その離婚が認められるかという問題です。
2 有責配偶者からの離婚請求は認められるか?
古くは、裁判所は有責配偶者からの離婚請求を認めていませんでしたが、
その後裁判で以下の3つの理由があれば離婚を認めることもあり得るという方向になりました。
①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間と比較して、かなり長期間に及んでいること。
②当事者の間に未成熟の子供が存在しないこと。
③相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に非常に苛酷な状況におかれること
この判断基準が示されてからは、裁判での一応の基準とされています。
しかし、実際の判断は個々の事案で全く事情が異なるため、必ずこうなるという結論が出せる訳ではありません。
以下、もう少し詳しく解説します。
3 別居期間
別居期間について、7年半で離婚を認めた事案もあれば、8年で離婚を否定した事案もあります。
ここで重要なのは、別居期間だけでなく、当事者の年齢、同居期間、別居期間の当事者双方に与える事情の変化など、多くの事情を検討し、結論が出されます。
単なる数字としての別居期間で判断されるわけではないことに注意が必要です。
4 未成熟子の存在
未成熟子というと未成年と思われがちですが、そうではありません。
高校を卒業する程度くらいまでとも言われていますが、経済的に自立することが出来ない子どもという意味合いです。
ここでも、子どもの年齢、生活状況等を見て、離婚を認めることが配偶者にとって酷であるかを検討する必要があります。
たとえば、子どもが障害を持っている場合などには、離婚請求を認めない方向になりやすいでしょう。
5 配偶者の社会的、経済的に過酷な状況
配偶者が離婚によりどの程度の不利益を受けるかです。
財産分与や慰謝料で経済的に過酷な状況におかないようにすることで解決することもありますが、一般に日本では、妻が専業主婦やパートで長年の結婚生活を送っていることも多く、離婚によって、一気に経済的に困窮してしまうこともあります。
6 事情を総合的に考慮する必要
以上のように3つの要件を検討する必要がありますが、一つ一つをバラバラに検討するのではなく、具体的事情をもとに3つの要件とどのように関連してくるかを総合的に検討していかなければなりません。
実際に15年以上の別居期間があっても離婚を否定されたケースもあります。
7 まとめ
有責配偶者からの離婚請求が問題となる場合、どのように法的手続を進めていくかは難しい法的問題で、この判断を自分だけでするのは困難です。
早めに弁護士にご相談ください。
8 参考(東京高裁平成30年12月5日)
有責配偶者からの離婚請求と似た事案で、信義則違反を理由に離婚請求を否定した裁判例が近時出されました。
夫婦関係についての話し合いを一切拒絶し、長年にわたり家族を放置し、自身の病気の父親の世話も妻がしていたという事案で、有責配偶者に準じる地位にあることを考慮し、結論として信義則違反として離婚請求を否定しました。
有責配偶者からの離婚請求ではありませんが、事案によっては信義則により離婚請求を制限したという参考になる裁判例です。