50代・60代から考える熟年離婚 弁護士が教える役職定年後の財産分与と年金分割の成功法

1 熟年離婚の現状と増加する理由

 

厚生労働省の2022年の人口動態統計によりますと、離婚の全体件数は17万9099組(同居期間不詳の1万2894組を含む)で、うち同居期間20年以上の夫婦の離婚は3万8991組で、同居期間不詳を除いた全体件数に占める「同居20年以上」の割合は23.5%と過去最高になりました。

 

しかも、ここ20年以上、4万組前後で高止まりしているのです。

 

なぜ50代・60代での熟年離婚が増加しているのでしょうか。

 

その原因として平均寿命が延びたことと「役職定年」で年収が大きく減ることが影響していると言われています。

 

1950年頃の平均寿命は60歳前後だったのに対し、2022年の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳と飛躍的に延びています。

 

これによって、子どもが独立して定年を迎えた後に夫婦で過ごす時間が長くなり、性格の不一致や介護まではしたくないなどの理由から新しい人生を歩みみたい・夫婦関係をリセットしたいと考える方が多いようです。

 

また、役職定年を取り入れている企業では、55~58歳頃に役職が外れます。

 

役職が外れた後は役職定年前の給料の半額以下にまで減少するケースは約4割にものぼります。

 

これまで喧嘩が絶えなかったり、性格が合わないといった問題を抱えながらも離婚をせずに我慢をしてきた夫婦が、収入が減ることが最後の一押しとなって離婚に踏み切ることとなります。

 

2 熟年離婚のための戦略と準備

 

熟年離婚をするにあたっては「離婚後、ちゃんと食べていけるのだろうか。

 

経済的基盤はどうなるのだろうか。」と不安に感じる方も多いかと思います。

 

ですから、熟年離婚を考えるときには、その後の生活に困らないようにする必要があります。

 

(1)財産分与

 

夫婦で数十年の長い年月を過ごし、子どもも成人を迎えて住宅ローンもある程度返済が済んでくると、夫婦の共有財産も増えていきます。

 

共有財産は原則として夫婦で半々に分けます。誰の名義かは関係がなく、夫婦の財産であれば分与の対象となります。

 

夫婦の一方が家計を管理している場合、他方の配偶者は一体どの程度の共有財産があるのか、全く把握されていないこともあります。

 

時には、夫の年収も知らないとか、給与明細も見た事がないという方もいらっしゃいます。

 

まずは、夫婦の財産がどの程度あるのかを把握しましょう。そのためには、

 

・給与明細を確認する

 

・どの銀行・支店に口座を持っているのかを把握する

 

・銀行・証券会社・保険会社から届く郵便物はチェックをする

 

といったことから始めましょう。

 

(2)年金分割

 

年金は老後の生活を支える重要な収入です。

 

少しでも多く貰えるように手続をとることは大切です。そのための制度が年金分割です。

 

年金分割とは、婚姻中に夫婦が納めた厚生年金保険料を離婚時に2分の1ずつ分割する制度です。対象になるのは厚生年金のみで、国民年金は対象外です。

 

年金分割には2つの種類(合意分割制度と3号分割制度)があります。

 

3号分割とは、平成20年4月1日以降の婚姻期間が対象で、第3号被保険者であった期間の配偶者の厚生年金記録を2分の1ずつ夫婦間で分割できる制度で、第3号被保険者からの請求によって認められますので、夫婦間の合意は必要ありません。

 

なお、平成20年4月1日より前に第3号被保険者である期間があっても、その期間は3号分割が認められません。

 

合意分割とは、離婚の際に、年金をどのくらいの割合で分割するかについて、夫婦間での合意(公正証書の作成または2人で一緒に最寄りの年金事務所に行く必要があります)、または裁判所の手続(調停もしくは審判)によって分割する方法です。

 

年金分割の請求は離婚した日の翌日から2年以内に行う必要があります。

 

ただし、年金制度は非常に複雑です。

 

年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得する際に、併せて年金分割を行った場合のシミュレーション結果も出してもらうといいでしょう。

 

3.弁護士の役割とその選び方

 

長年連れ添った夫婦だから面と向かって離婚の希望を伝えられない、離婚したいと伝えたところできっと相手は離婚に応じないだろうという不安・お悩みをお持ちの方も多いかもしれません。

 

また、熟年離婚で最も重要になるのは財産分与です。

 

相手も同じように老後を迎え収入も減るなかで経済面・生活面に不安を抱えるなかでの離婚となりますので、なかなか資産を渡そうとしないかもしれません。

 

特に自宅がある場合や退職金がある場合には、財産分与の対象となる財産が高額になりがちですから、より一層合意が得られにくい傾向にあります。

 

また、一方の配偶者が1人で家計を管理している場合には、家族が知らない財産があるケースもあり、財産の調査をお1人で進めようにも、何から手を付けたら良いのか分からず途方に暮れることもあるでしょう。

 

ですが、離婚問題について専門的な知識を持った弁護士に依頼すれば、その時々に応じた適切なアドバイスを受けることが出来ますし、離婚手続は全て弁護士が行いますので、相手と直接お話をする必要もありません。

 

また、複雑で難しい裁判所の手続も全て弁護士が行います。

 

お1人で判断をされず、熟練した弁護士のサポートを受けて、不安のないスムーズな離婚手続を進めましょう。

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弁護士法人アイリス

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