養育費を支払い続けてもらうために

1.養育費の支払い状況

養育費は、子の健全な成長のために不可欠のもので、子を監護養育していない親の責務です。

しかし、実際の養育費支払い状況は低いと言われており、実際に養育費をもらっていないという方

が、残念ながら多い状況です。

厚労省のデータによると、現在も養育費の支払いを受けていると回答した割合は、母子家庭で2

4.3%、父子家庭で3.2%となっています。

離婚してからの年数ごとにみると、年数がたてばたつほど、養育費の支払いがされている割合が減

少していきます。

2.養育費の支払いを続けようという気持ちにさせる方法

(1)養育費の取り決め

厚労省のデータによると、そもそも養育費の取り決めをしている割合が、母子家庭では42.

9%、父子家庭では20.8%となっており、協議離婚に関しては、母子家庭では37.8%まで

減少しています。

そもそも、養育費の合意をしていないケースが過半数を占めているのです。

そして、協議離婚では、取り決めを口頭で約束しただけというケースも多く、文書での合意をして

いないことが多いでしょう。

(2)養育費の取り決めをしておく

養育費の取り決めをしないのは、「相手に支払能力がないと思った」「相手と関わりたくない」が

圧倒的に多い理由となっています。

養育費の支払は義務ではありますが、理由があって請求しないという選択も当然あります。離婚後

は相手と関わることなく、子を育てていくという考えをお持ちの方も多くいらっしゃいます。

ただ、本来は支払ってもらいたい状況にあるのに最初から養育費を請求しないというのは、子ども

の養育の点からしても適切ではありません。

養育費の取り決めをしていた場合の支払は、協議離婚の場合は、現在も支払を受けている人は2

2.4%、協議離婚以外の調停離婚、裁判離婚による場合は、41.5%となっており、倍近くに

なっています。

このデータから推測されるのは、正式な文書として合意しておけば支払が継続されやすいというこ

とです。

調停離婚の場合は調停調書という裁判所が作成する公文書として残ります。これにより相手に養育

費をきちんと支払わなければならないという意識を持たせることができます。

そして、協議離婚の場合にも文書に残すべきで、公正証書によることがいいでしょう。先ほど述べ

たように協議離婚の場合に取り決めをしても、口頭による場合が多く、正式に文書化していないこ

とが多くあり、文書として合意しておけば、相手に意識を持たせることが可能になります。

(3)強制執行の可能性

調停、裁判離婚では、そこで作成される調停調書、判決によって強制執行することが出来ます。

実際に強制執行をする場面も当然ありますが、給与を差し押さえられるおそれがあるということ

も、相手に養育費を支払わなければならないという方向に導きます。

協議離婚の場合には公正証書にしておけば、強制執行することが可能になります。

このように相手に対する意識を強く持たせることが重要で、強制執行できる可能性があることが、

養育費の支払いをしなければならないという方向に働きます。

(4)子どもとの関係

面会交流と養育費の関係がよく問題になります。

養育費も支払っていないのだから面会はさせない、またその逆の話もあります。

養育費と面会交流は、法的には関連するものではありません。養育費を支払っていなくても面会交

流をしたいと要求することは出来ます。

他方で、子どもと関係を有しているからこそ、養育費の支払いをきちんとしていくという意味では

事実上リンクしています。

養育費は子どものためであり、面会交流も子どものためにあるのものです。結果的に面会をしてい

れば養育費の支払いがされることは多いでしょう。

その意味で、子どもとの関係があることが、養育費を支払う気持ちにさせる方法の一つともいえる

でしょう。

ただ、面会が出来る状況でなかったり、面会に消極的な気持ちで条件をつけて面会をしているケー

スもあります。そのような場合でも、全く子どもとの関係を切らず、会えないときでも、子どもの

近況を知らせたり、子どもの進路を伝えたりするなどしておくことも意味があります。

養育のために子どもとの関係をもたせるというと、印象が悪いかもしれません。しかし、ここで重

要なのは子どもの成長発展のために双方が何をすべきかということです。養育費にしても、面会に

しても子どものためにあるということを忘れずに、どのようにすれば一番子どもにとっていいかと

いう視点から養育費・面会のことを取り決めていきましょう。

3.最後に

養育費の支払いは、親としての義務です。

本来は、当然支払われてしかるべきです。

その支払がされていないことが当たり前のように考えられているのが非常に問題です。

支払確保のための手段は、家庭裁判所の履行勧告、強制執行などがありますが、事後的な手段だけ

でなく、相手に養育費を支払う気持ちになってもらうことが重要です。

取り決めをきちんとしておくこと、どうして養育費が必要なのかを自分自身も考え、

相手に理解してもらうことが重要だと思います。

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弁護士法人アイリス

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